膠原病に伴う腎炎

膠原病とは?

「膠原病」という言葉は、ひとつの特定の病気を指すのではなく、同じような仕組みで起こる病気のグループをまとめた呼び方です。体の防御システムである免疫が誤って自分自身を攻撃してしまう、「自己免疫疾患」の一種です。

共通する特徴は次の2つです。

  1. 全身の臓器を標的にする(関節、皮膚、腎臓、肺、心臓など)
  2. 自己抗体と呼ばれる「自分の体を攻撃する抗体」が作られる

全身性エリテマトーデス(SLE)

SLEは、膠原病の中でも特に腎臓への影響が強い病気です。
関節痛、発熱、頬の蝶形紅斑、光に当たると皮疹が出る光線過敏、口内炎など、多彩な症状を示します。
血液中に自己抗体ができ、炎症が全身に広がることで、さまざまな臓器が影響を受けます。

ループス腎炎とは

SLEの経過の中で、腎臓に炎症が起こる状態をループス腎炎といいます。
尿に血尿やたんぱく尿が出るだけの軽いものから、ネフローゼ症候群や急速進行性糸球体腎炎のように、腎機能が急に悪化する重いタイプまで、非常に幅があります。

検査と診断

尿異常や腎機能の低下を認めた場合には、次のような検査を行います。

  • 血液検査:自己抗体(抗DNA抗体、抗Sm抗体など)や補体(C3、C4)の値を確認
  • 尿検査:たんぱく尿、血尿、円柱の有無
  • 画像検査:腎臓の形や大きさを確認
  • 腎生検:腎臓の組織を採取し、顕微鏡で腎炎のタイプを確認

腎生検での組織像によって、ループス腎炎は6つの病型(ISN/RPS分類)に分けられ、それぞれで治療方針が異なります。
そのため、腎生検は診断と治療方針決定に欠かせない検査です。

予後

治療によりSLEの活動性を抑えられれば、腎機能の低下を防ぐことが可能です。
しかし、治療が遅れたり効果が不十分だったりすると、慢性糸球体腎炎のように炎症が持続し、最終的に腎不全に至ることがあります。
ネフローゼ症候群や急速進行性腎炎を合併した場合は、特に注意が必要です。

治療

治療の基本は、免疫の過剰な働きを抑えることです。
主に以下の薬を使用します。

  1. 副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)
     炎症を強力に抑える基本薬。発症初期や再燃時に使用します。
  2. 免疫抑制薬(シクロフォスファミド、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、ボクロスポリンなど)
     ステロイドだけでは抑えきれない場合に併用します。
  3. 生物学的製剤(ベリムマブ、サフネロー、リツキシマブ)
     

薬には副作用もあるため、専門医による慎重な投与と経過観察が必要です。ステロイドの減量や併用薬の選択は、患者さんごとに最適化していきます。

関節リウマチ

関節リウマチ(RA)は関節の炎症を中心とする自己免疫疾患ですが、まれに腎臓にも影響を及ぼすことがあります。

原因としては、

  • 長期の炎症によるアミロイド沈着(アミロイド腎症)
  • 治療薬(抗リウマチ薬)による薬剤性腎障害
    などが挙げられます。

また、関節リウマチの炎症が高い人ほど、腎機能が低下しやすいこともわかっており、関節リウマチの病状をしっかり抑えるということも非常に重要です。(図1)

蛋白尿を認める場合は、腎炎やアミロイド腎症の可能性を考え、腎生検での確認が必要になることもあります。
腎障害の原因が治療薬によるものであれば、薬の調整で改善することもあります。

当院の診療体制

当クリニックでは11人のリウマチ専門医が毎日診療に当たり、関節リウマチや膠原病に対する多くの診療実績があります。また、免疫抑制剤はもちろん、必要に応じてすべての生物学的製剤の使用が可能です。患者さんの症状やライフスタイルに合わせた治療計画を立て、安心して治療を受けていただけるよう、きめ細やかなサポートを提供してまいります。

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