骨粗しょう症とは
骨粗しょう症は「骨の強さ(骨強度)」が低下し、骨折しやすくなる病気です。
骨の強さは、「骨密度」と「骨質」という2つの要素で決まります。一般的には、骨密度が約70%、骨質が約30%を占めるといわれています。
よく鉄筋コンクリートに例えられます。コンクリート部分が「骨密度」、鉄筋部分が「骨質」です。骨密度はカルシウムなどのミネラル成分を反映し、骨密度検査(DXA法)で評価します。一方、骨質は骨の中のコラーゲンの状態や構造を指しますが、現時点では標準化された測定法が確立していません。
なぜ骨粗しょう症になるのか
骨は常に「骨吸収」と「骨形成」という新陳代謝を繰り返しています。
古い骨を破骨細胞が壊し(骨吸収)、新しい骨を骨芽細胞が作る(骨形成)というサイクルが保たれているのが正常な状態です。
このバランスが崩れ、骨吸収が優位になると骨がもろくなっていきます。閉経後の女性では、ほぼすべての方に発症の可能性があるため、早期の検査・予防が重要です。
主な原因として次のようなものが挙げられます。
- 閉経:女性ホルモン(エストロゲン)の低下により骨吸収が進む
- 加齢:骨形成の低下
- 遺伝的要因
- 運動不足
- 生活習慣病(糖尿病など)
- 低体重、栄養不足(特にカルシウム・ビタミンD不足)
- ステロイド性骨粗鬆症
検査方法
当院では、DXA(デキサ)法による骨密度測定を行っています。
腰椎と大腿骨での測定が標準的ですが、検査が難しい場合は橈骨(腕の骨)で測定することもあります。
検査結果は「YAM値(Young Adult Mean)」に対する割合で示されます。YAMとは20〜44歳の健康な成人の平均骨密度を指し、これに対して70%未満であれば骨粗しょう症と診断されます。
また、骨密度がそれ以上でも、わずかな力(立った高さからの転倒など)で骨折を起こした場合は「脆弱性骨折」と判断され、骨粗しょう症の診断となります。
治療について
骨粗しょう症と診断された場合、薬物療法が基本となります。
食事や運動も大切ですが、診断後にそれだけで進行を止めることは難しいため、薬による治療が必要です。治療を始めても5年以内に半数の方が中断してしまうといわれますが、骨粗しょう症は「治る」病気ではなく、「進行を抑える」病気です。継続することが何よりも大切です。
主な薬物療法
- ビスホスホネート製剤
最も広く使用される薬です。破骨細胞を抑えて骨吸収を防ぎます。
内服薬(週1回・月1回)や注射薬があります。 - SERM(選択的エストロゲン受容体調整薬)
閉経に伴う女性ホルモンの低下に対して、骨にのみエストロゲン様作用を発揮する薬です。乳腺や子宮には作用しにくく、比較的安全に使用できます。閉経後まもない女性に適しています。 - テリパラチド製剤
副甲状腺ホルモンに似た成分で、骨を「作る」力を高める薬です。重度の骨粗しょう症や骨折を繰り返す方に使用されます。自己注射や通院注射がありますが、費用が比較的高い点が難点ですが、現在はバイオシミラー製剤が利用可能であり、以前よりも安価で治療可能です。骨折治癒を促進する効果も期待できます。 - 抗スクレロスチン抗体製剤
新しいタイプの薬で、骨形成を促進すると同時に骨吸収も抑えます。1か月に1回、2本の皮下注射を行います。現在、最も骨密度上昇効果が期待できる薬剤の一つですが、高価です。 - ビタミンD製剤
カルシウムの吸収を助け、転倒予防効果も報告されています。主に補助的に用いられますが、ビタミンD不足がある場合には積極的な補充が必要です。
治療を続けるために
骨粗しょう症は自覚症状が少ない病気ですが、放置すると骨折を起こしやすくなります。
治療の目的は「骨折を防ぐこと」であり、骨密度を上げること自体がゴールではありません。
医師と相談しながら、自分に合った治療を続けることが何より大切です。