高安動脈炎

概要

高安動脈炎は大動脈とその枝(腕頭動脈、鎖骨下動脈、椎骨動脈、腹腔動脈、腎動脈)、冠動脈、肺動脈に炎症を引き起こし、動脈内腔の狭窄や閉塞、拡張、動脈瘤形成を来たします。その結果、四肢や臓器に血流障害の症状がみられます。本疾患は1908年に眼科医の高安右人先生によってはじめて報告されたため、高安動脈炎と呼ばれています。男女比は1:9で、20歳代の女性に好発します。HLA-B52, B39との関連が指摘されており、アジア、中東、南米で発症率が高いことが知られています。本疾患は、厚生労働省の定める特定疾患に指定されています。重症度に応じて公費助成の対象となっています。我が国での推定患者数は約6,000人といわれています。関節リウマチは患者数が推定80万人であることを考えると稀な疾患であります。

症状

初期症状として、発熱、全身倦怠感、体重減少、関節痛などが挙げられます。こうした症状は風邪などの症状に類似しており、患者さんは診断される前に様々な医療機関を受診していることが多いと言われています。若年女性に長引く発熱がみられる場合には、高安動脈炎を鑑別の一つに考慮する必要があります。他の症状は、障害を受けた血管の部位により異なります。頻度の高い症状として、血圧の左右差 (10 mmHg以上) (46%)、上肢の脈が弱くなる(31%)、めまい (20%)、失神 (3%)、視力障害 (10%)、腎臓への血流障害による高血圧 (41%)、腎機能低下 (11%)、大動脈弁閉鎖不全による動機や息切れ (20%)、狭心症 (15%)などが厚生労働省に報告されています。

血液検査

通常、炎症反応を示すC反応性タンパク (CRP)や赤血球沈降速度 (ESR) の上昇が認められます。

画像検査

造影CTやMRI画像で血管の狭窄や閉塞、動脈瘤を詳細に観察します。造影CTでは動脈壁の全周性のドーナツ状の肥厚や内腔の狭窄が観察されますが、高安動脈炎は若い女性に多く、CTを繰り返し撮影することは過度の放射線被爆につながるため、MRIを活用するケースも増えてきています。図1は左総頚動脈と腕頭動脈の狭窄に対してステントを留置した当院症例の造影CT画像です。超音波エコー検査では炎症壁の低エコーを反映するハローサインが見られます。2018年からはFDG-PETが保険適用となり活動性の有無を判定したり、活動性の部位を判定するのに役立ちます(図2)。

図1 高安病の造影CT画像。左総頚動脈と腕頭動脈の狭窄病変に対してにステントを留置した症例(自験例)
図2 高安動脈炎のFDG-PET画像 大動脈壁に集積を認める(国立国際医療研究センター病院の症例)

診断

2017年に策定された厚生労働省の診断基準 (表1) を参考にdefiniteを対象とします。

表 高安動脈炎の診断基準 (2017年 厚生労働省診断基準)
A 症状
1. 全身症状
発熱、全身倦怠感、易疲労感、リンパ節腫脹 (頸部)、若年高血圧 (140/90 mmHg以上)
2. 疼痛
頸動脈痛 (carotidyna)、胸痛、背部痛、腰痛、肩痛、上肢痛、下肢痛
3. 眼症状
一過性又は持続性の視力障碍、眼前明暗感、失明、眼底変化 (低血圧眼底、高血圧眼底)
4. 頭頸部症状
頭痛、歯痛、顎跛行、めまい、難聴、耳鳴、失神発作、頸部血管雑音、片麻痺
5. 上肢症状
しびれ感、冷感、挙上困難、上肢跛行、上肢の脈拍及び血圧異常、橈骨動脈の脈拍減弱、消失、
10mmHg以上の血圧左右差)、脈圧の亢進 (大動脈弁閉鎖不全症と関連する)
6. 下肢症状
しびれ感、冷感、脱力、下肢跛行、下肢の脈拍及び血圧異常 (下肢動脈の拍動亢進あるいは減弱、血圧低下、
上下肢血圧差 ( [下肢が上肢より10~30mmHg高い]から外れる血圧異常))
7. 胸部症状
息切れ、動機、呼吸困難、血痰、胸部圧迫感、狭心症状、不整脈、心雑音、背部血管雑音
8. 腹部症状
腹部血管雑音、潰瘍性大腸炎の合併
9. 皮膚症状
結節性紅斑
B 検査所見
大動脈 (上行、弓行、胸部下行、腹部下行) とその第一分枝 (冠動脈を含む)、肺動脈、心、の両方あるいはどちらかに検出される多発性 (2つ以上の動脈又は部位、大動脈の2区以上のいずれか) またはびまん性の
肥厚性病変 (超音波、造影CT、ガドリニウム造影MRI、PET-CTで描出される)、
狭窄病変 (閉塞を含む) あるいは、
拡張性病変 (胸部X線、CT angiography, MR angiography, 心臓超音波検査、血管造影で検出される) の所見。
※造影CTは造影後期相で撮影。CT angiographyは造影早期相で撮影、三次元元画像処理を実施。
血管造影は通常、血管内治療、冠動脈・左心室造影などを同時目的とする際に行う。
C 鑑別診断
動脈硬化症、先天性血管異常、炎症性腹部大動脈瘤、感染性動脈瘤、梅毒性中膜炎、巨細胞性動脈炎、血管型ベーチェット病、IgG4関連疾患
診断のカテゴリー
Definite: Aのうち1項目以上+Bのいずれかを認め、Cを除外したの。
参考所見
血液・生化学所見:赤沈亢進、CRP高値、白血球増加、貧血
遺伝学的検査:HLA-B52またはB67保有

治療

血管炎症候群の診療ガイドラインを参考に治療します。高安動脈炎の治療の目的は、炎症を抑え、血管の狭窄や閉塞による合併症を予防することです。薬物療法が中心ですが、時に外科的治療を必要とする場合もあります。炎症を抑えるために副腎皮質ステロイドが使用されます。主にプレドニゾロン(商品名:プレドニン)を初期量として0.5~1 mg/kg/日が用いられます。症状や検査所見が安定すれば漸減を開始しますが、漸減中に約7割が再燃するとの報告があります。ステロイド抵抗性の症例、ステロイドの漸減に伴い再燃する症例、副作用への懸念からステロイドの早期減量が必要な症例においては、IL-6受容体阻害剤であるトシリズマブ(商品名:アクテムラ)、あるいはメトトレキサートを中心とした免疫抑制剤の併用が検討されます。動脈の狭窄、拡張病変を有する場合は、血栓性合併症を生じる可能性があるため、抗血小板薬や抗凝固薬が併用されます。血管狭窄や閉塞が重篤な場合には、血管バイパス手術や血管形成術が検討されます。

生活上の注意

食事

貧血や骨粗鬆症を併発しやすいので、鉄分、カルシウム、良質な蛋白質を積極的に摂取しましょう。
ステロイドを使用している場合は生活習慣病のリスクが高くなります。また、使用している薬剤によっては、慢性腎臓病のリスクも高まります。適切なカロリー摂取とバランスの良い食事を心がけ、生活習慣病の管理をしっかりと行いましょう。

睡眠

十分な睡眠時間を確保し、睡眠不足にならないように工夫しましょう。睡眠不足は症状を悪化させる要因となります。

運動

痛みが強い時には安静が第一ですが、薬物療法で痛みや腫れが落ち着いてきたらリウマチ体操などの運動療法を始めましょう。関節を動かすことで、痛みやこわばりを和らげ、筋力や関節の可動域を維持・向上させます。

物理療法

炎症が収まっているときには、関節をホットパックやパラフィン浴などの温熱療法が適しています。炎症が強く、痛みや晴れがあるときには患部を冷やしましょう。

感染の予防

感染症にかからないようにマスクの着用、手洗い、うがい、十分な睡眠、バランスの取れた食事を心がけましょう。

当院の特徴

  1. リウマチ専門医による診療
    当院では、関節リウマチ・膠原病診療に精通した経験豊富な専門医に加え、大学で教育・研究に携わる医師や教授の医師を含む、計11名の専門医が外来診療を担当しています。
    また、小児科専門医資格を有する医師 (毛利医師) も在籍しており、若年性特発性関節炎をはじめとする小児リウマチ性疾患(各種膠原病、自己炎症症候群など)にも対応可能です。
  2. 充実した検査体制
    ☑院内迅速検査として、以下の項目が即日に結果説明が可能です。
    尿検査
    血算(白血球・赤血球・血小板)、CRP
    血糖 (グルコース・HbA1c)
    Dダイマー
    各種感染症の抗原検査、PCR検査(インフルエンザやCOVID-19等)
    生化学検査 (肝機能・腎機能・電解質・脂質など) (※2025年11月15日開始)。

    ☑生理学的検査としては、心臓、消化器、内分泌・代謝、リウマチ専門医による超音波検査が可能です。
    心電図
    肺機能検査
    血管伸展性検査
    各臓器別専門医による超音波 (エコー) 検査

    ☑画像検査としては、CT、MRI検査まで備えていることが当院の特徴です。
    レントゲン検査
    骨密度検査 (DXA法)
    CT検査
    MRI検査

    これらの検査体制により、各臓器の合併症や治療に伴う副作用の全身的な評価を必要に応じて行うことができ、診断・治療・副作用対応までを院内で完結できる体制を整えています。
  3. 全身疾患であるリウマチ膠原病疾患の臓器合併症に対応
    リウマチ・膠原病疾患は全身疾患です。当院では、循環器呼吸器消化器内分泌・代謝の専門外来も行っており、患者様を都度他病院にご紹介することなく、クリニック内で全身の合併症の評価が可能です。
  4. 治療に伴う副作用の診断・治療に対応
    リウマチ・膠原病の治療では、ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤を中心とした薬物療法が主体となりますが、これらはいずれも感染症、骨髄抑制、肝機能障害、腎機能障害など、多様な副作用を伴う可能性があります。特にステロイドは、感染症のほか、糖代謝・脂質代謝異常や骨粗鬆症など全身への影響がみられることがあります。
    当院では、こうした治療関連有害事象に対しても、院内検査体制を活かした早期診断と、各科専門医との連携による多角的な対応が可能です。外来での対応が困難な場合には、速やかに高度医療機関への紹介を行う体制を整えています。リウマチ・膠原病診療における安全性と有効性の両立を目指し、継続的なモニタリングと副作用管理を行っています。

まとめ

当院は埼玉県所沢市にあり、狭山・入間・川越など近隣地域に加えて、清瀬市・東久留米市・小平市など東京都西部からも多くの方にご来院いただいています。
リウマチ・膠原病診療において、私たちは安全性と有効性を両立した医療の提供を目指しています。
各分野の専門医が連携し、早期診断から長期管理まで一貫した体制で診療を行っています。

リウマチ・膠原病は、長く付き合っていく必要のある病気ですが、適切な治療と定期的なフォローにより、より快適に過ごすためのサポートが可能です。
当院では、患者さんが安心して治療を続けられるよう、専門医チームがサポートいたします。

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