概要
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus; SLE)は、全身の臓器を侵す炎症性疾患で、寛解と再燃を繰り返し、慢性の臨床経過をたどります。特徴的な顔の紅斑が狼に噛まれたように見えることから、ラテン語の狼を意味する「ループス」が用いられてきました。SLEの疫学データは、国や地域、人種によって異なりますが、世界で共通しているのは、好発年齢が15~45歳、男女比が1:9とういう事実です。わが国で2022年にSLEの難病申請をしている方は全国で約6万人ですが、申請をしていない方や医療機関を受診していない方を含めるとこの2倍くらいの人がこの病気をもっていると推察されています。日本における一般人口でのSLEの有病率は0.02‒0.15%であるのに対して、一卵性双生児では一致率が25‒60%と極めて高く、SLEの発症には遺伝的要因が深くかかわっていると考えられています。しかし、一致率が100%ではないので、遺伝以外に感染、性ホルモン、紫外線、薬物などの環境的要因も加わり、自己抗原に対する免疫学的寛容が破綻し、DNA-抗DNA抗体などの免疫複合体が形成され、組織に沈着して障害を起こす自己免疫性疾患であると考えられています。
症状
全身症状
全身倦怠感、易疲労感や発熱などが先行することが多くみられます。
臓器症状
特徴的な皮膚・粘膜症状
頬部紅斑
蝶形紅斑は頬の両側に蝶が羽を広げたように分布するため、蝶形紅斑ともよばれ、SLEに最も特徴的な急性皮膚病変です(図1)。これに対して円盤状のデイスコイド疹もこの病気に特徴的で、顔、耳介、頭部、関節背面などで認められ、SLEの慢性皮膚病変の一つです。

レイノー現象
レイノー現象はSLEに特徴的というわけではないですが、寒さに暴露すると血管が収縮して手の指先の色調が白くなり、温めると紫色になったあと、赤くなって元に戻ります。

無痛性の口内炎
硬口蓋に生じる無痛性の口内炎が典型的とされてきましたが、有痛性のアフタ性口内炎が多発して生じることもあります。
関節症状
多くのSLEの患者さんでみられ、約半数では初発症状となるSLEの主要な徴候の一つです。SLEの関節炎は関節リウマチと異なり、関節が壊れないのが特徴です。
心臓と肺の症状
胸膜や心外膜といった漿膜に炎症をきたすと胸膜炎や心外膜炎をおこして胸水や心嚢液が貯留することがあります。ともに胸が痛くなったり、息が苦しくなったりします。こうした合併症以外にも間質性肺炎、肺胞出血や肺動脈性肺高血圧といった重篤な症状を起こすことがあります。
腎臓の症状
SLEによって生じる腎臓病はループス腎炎と呼ばれ、SLE患者の約50%に合併します。尿に蛋白が漏れるため血液中の蛋白が少なくなり、全身がむくみ、高血圧や体重の増加をきたします。定期的な検尿を専門医のもとで行い、ループス腎炎が疑われた時には腎生検によって腎臓の一部の組織を採取し、顕微鏡で観察しISN/RPS分類に基づいて適切な治療薬を選択します。ループス腎炎以外にも、動脈硬化による腎障害や、薬剤性の腎障害を合併することもあります。
中枢神経症状
精神症状とけいれん発作が比較的多い。無菌性髄膜炎多脊髄横断症状、頭痛、多発性単神経炎、うつ状態、統合失調様反応などをみることがある。脳血栓症を認める場合は抗リン脂質抗体症候群の存在を示唆する。
貧血・白血球減少・血小板減少
SLEではこれらの成分に対して、自分の免疫が攻撃をすることがあります。対象が白血球の場合はリンパ球と呼ばれる種類の白血球が減少し、赤血球の場合には溶血性貧血が起こり、血小板では血小板減少性紫斑病がおこり血が止まりにくくなります。
診断
SLEの診断はある特定の検査でなされるおのでなく、上記の症状や検査、画像所見を用いて総合的に判断します。診断にはSLICCと呼ばれる分類基準や2019年のアメリカリウマチ学会と欧州リウマチ学会が合同で作成した分類基準(表1)が用いられます。後者の場合、エントリー基準として、少なくとも1回は抗核抗体80倍以上陽性が必須です。7つの臨床項目と3つの免疫項目からなり、少なくとも一つ以上の臨床項目を含む10点以上でSLEと診断されます。
| 臨床 | 全身症状 | 38.3度をこえる発熱 (2) |
| 血液所見 | 4,000/μl未満の白血球減少 (3) 10万/μl未満の血小板減少 (4) 自己免疫性溶血 (4) | |
| 精神神経 | せん妄 (2)、精神障害 (3)、痙攣 (5) | |
| 皮膚粘膜 | 非瘢痕性脱毛 (2)、口腔内潰瘍 (2) 亜急性皮膚ループスや円板状ループス (4) 急性皮膚ループス (蝶形紅斑や斑状丘疹状皮疹) (6) | |
| 漿膜 | 胸水 or 心嚢液 (5)、急性心外膜炎 (6) | |
| 筋骨格 | 関節症状 (6) | |
| 腎臓 | 0.5g/日以上の尿蛋白 (4) 腎生検で クラスII or Vのループス腎炎 (8) クラスIII or IVのループス腎炎 (10) | |
| 免疫 | 抗リン脂質抗体 | 抗カルジオリピン抗体 or 抗β2GP1抗体 or ループスアンチコアグラント (2) |
| 補体 | C3かC4どちらか低下 (3) C3とC4両方低下 (4) | |
| SLE 自己抗体 | 抗ds-DNA抗体 or 抗Sm抗体 (6) |
治療
SLEは免疫異常を基礎とした全身性炎症性疾患ですので、その治療は抗炎症と免疫抑制が主体となります。基本的な主な治療薬として非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)、グルココルチコイド(ステロイド)、抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンや免疫抑制薬があります。
免疫抑制薬としてはミコフェノール酸モフェチル、シクロフォスファミド、アザチオプリン、タクロリムスなどが用いられます。
最近ではB細胞活性化因子(BAFF)を標的とするべリムマブとインターフェロン受容体を標的とするアニフロルマブといった分子標的薬が使用可能となりました。また難治性のループス腎炎にはB細胞を標的としたリツキシマブが使用できるようになりました。
こうした薬剤は患者さんの病状を診ながら2019年の本邦のSLE診療ガイドラインでの診療のアルゴリズムや2023年の欧州リウマチ学会からの推奨に基づいて選択します。
生活上の注意
紫外線への長時間の暴露を避ける
SLEだは日光への長時間の暴露は避けることが大切です。夏の海や山はできるだけ避け、日常生活でも日焼け止めクリームや日傘を用いて紫外線を避けるように心がけましょう。
防寒
レイノー現象がある方は、寒い所に出掛ける際には手袋を使用し、身体の中心も含めて温かく保つことが重要です。
食事
貧血や骨粗鬆症を併発しやすいので、鉄分、カルシウム、良質な蛋白質を積極的に摂取しましょう。
ステロイドを使用している場合は生活習慣病のリスクが高くなります。元々の病状や、使用している薬剤による慢性腎臓病のリスクも高まります。適切なカロリー摂取とバランスの良い食事を心がけ、生活習慣病の管理をしっかりと行いましょう。
睡眠
十分な睡眠時間を確保し、睡眠不足にならないように工夫しましょう。睡眠不足は症状を悪化させる要因となります。
運動
痛みが強い時には安静が第一ですが、薬物療法で痛みや腫れが落ち着いてきたらリウマチ体操などの運動療法を始めましょう。関節を動かすことで、痛みやこわばりを和らげ、筋力や関節の可動域を維持・向上させます。
物理療法
炎症が収まっているときには、関節をホットパックやパラフィン浴などの温熱療法が適しています。炎症が強く、痛みや晴れがあるときには患部を冷やしましょう。
感染の予防
感染症にかからないようにマスクの着用、手洗い、うがい、十分な睡眠、バランスの取れた食事を心がけましょう。
当院の特徴
- リウマチ専門医による診療
当院では、関節リウマチ・膠原病診療に精通した経験豊富な専門医に加え、大学で教育・研究に携わる医師や教授の医師を含む、計11名の専門医が外来診療を担当しています。
また、小児科専門医資格を有する医師 (毛利医師) も在籍しており、若年性特発性関節炎をはじめとする小児リウマチ性疾患(各種膠原病、自己炎症症候群など)にも対応可能です。 - 充実した検査体制
☑院内迅速検査として、以下の項目が即日に結果説明が可能です。
・尿検査
・血算(白血球・赤血球・血小板)、CRP
・血糖 (グルコース・HbA1c)
・Dダイマー
・各種感染症の抗原検査、PCR検査(インフルエンザやCOVID-19等)
・生化学検査 (肝機能・腎機能・電解質・脂質など) (※2025年11月15日開始)。
☑生理学的検査としては、心臓、消化器、内分泌・代謝、リウマチ専門医による超音波検査が可能です。
・心電図
・肺機能検査
・血管伸展性検査
・各臓器別専門医による超音波 (エコー) 検査
☑画像検査としては、CT、MRI検査まで備えていることが当院の特徴です。
・レントゲン検査
・骨密度検査 (DXA法)
・CT検査
・MRI検査
これらの検査体制により、各臓器の合併症や治療に伴う副作用の全身的な評価を必要に応じて行うことができ、診断・治療・副作用対応までを院内で完結できる体制を整えています。 - 全身疾患であるリウマチ膠原病疾患の臓器合併症に対応
リウマチ・膠原病疾患は全身疾患です。全身性エリテマトーデスはその代表格です。当院では、循環器、呼吸器、消化器、内分泌・代謝の専門外来も行っており、患者様を都度他病院にご紹介することなく、クリニック内で全身の合併症の評価が可能です。 - 治療に伴う副作用の診断・治療に対応
リウマチ・膠原病の治療では、ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤を中心とした薬物療法が主体となりますが、これらはいずれも感染症、骨髄抑制、肝機能障害、腎機能障害など、多様な副作用を伴う可能性があります。特にステロイドは、感染症のほか、糖代謝・脂質代謝異常や骨粗鬆症など全身への影響がみられることがあります。
当院では、こうした治療関連有害事象に対しても、院内検査体制を活かした早期診断と、各科専門医との連携による多角的な対応が可能です。外来での対応が困難な場合には、速やかに高度医療機関への紹介を行う体制を整えています。リウマチ・膠原病診療における安全性と有効性の両立を目指し、継続的なモニタリングと副作用管理を行っています。
当クリニックの取り組み
患者さんの病状を適切に把握し、それぞれに最適な治療を提供します。生物学的製剤であるべリムマブ、アニフロルマブも投与が可能です。
まとめ
当院は埼玉県所沢市にあり、狭山・入間・川越など近隣地域に加えて、清瀬市・東久留米市・小平市など東京都西部からも多くの方にご来院いただいています。
リウマチ・膠原病診療において、私たちは安全性と有効性を両立した医療の提供を目指しています。
各分野の専門医が連携し、早期診断から長期管理まで一貫した体制で診療を行っています。
リウマチ・膠原病は、長く付き合っていく必要のある病気ですが、適切な治療と定期的なフォローにより、日常生活を快適に過ごすことが可能です。
当院では、患者さんが安心して治療を続けられるよう、専門医チームがサポートいたします。