概要
乾癬性関節炎は、皮膚の病気である乾癬に、関節炎を合併した病気です。乾癬患者の約10~15%に発症するとされ、30~50歳代に多く、男女比はほぼ同じです。原因は不明ですが、自己免疫性疾患の一つと考えられています。
症状
乾癬性関節炎では、ほとんどの例で乾癬の皮膚病変を認めます。乾癬は髪の生え際や耳介後部、肘、膝、臍周囲、臀部などに多く、赤く盛り上がった発疹と、銀白色のフケのような鱗屑を認めます。乾癬性関節炎の症状は大きく分けて5つあります。
- 末梢関節炎:手足の指の第一関節を中心に、左右対称性に多関節が侵されます。
- 腱付着部炎:アキレス腱や膝蓋腱など、腱・靭帯が骨に付くところに痛みを認めます。
- 指趾炎:手足の指がソーセージの様に腫れます。足の第3・4趾によくみられます。
- 爪病変:爪の一部の剥離、肥厚、凹みを認めます。爪病変がある指は関節炎が起きやすいことが分かっています。
- 脊椎関節炎:背骨や仙腸関節に炎症が起こり、腰痛 (安静時に強くなり、動き出すと改善する) を認めます。
検査
炎症反応 (血沈、CRP) の上昇もみられうるが、必ずしも上昇しません。リウマトイド因子は通常陰性です。
診断
乾癬と診断されている方に典型的な関節炎が出現した場合は、比較的診断は容易です。しかし、関節炎が先行し、皮疹がない場合も少なからず存在するため、ご自身で乾癬の皮疹に気づかれていない場合も含めて、診断に時間がかかる場合もあります。診断にはCASPAR分類基準 (表1) が使用されます。
1. 現在乾癬にかかっている*、または過去に乾癬があった、または兄弟姉妹や両親、祖父母に乾癬の方がいる。 |
2. 典型的な乾癬の爪病変(爪剥離症、陥凹、過角化)がある |
3. リウマトイド因子が陰性 |
4. 指全体が腫れる指炎がある(あった) |
5. 手、足のX線検査で特徴的な所見(関節近傍の新骨形成)がある |
診断 |
炎症性の関節疾患(関節炎、脊椎炎、もしくは付着部炎)を有する方で、上記の各項目を1点として、 3点以上の場合に乾癬性関節炎と分類します。 *現在乾癬にかかっている場合は2点とします。 |
治療
病気の活動性を抑えて進行を防ぎ、日常生活の質を上げることを目標に治療を進めます。末梢関節炎が主体の場合、NSAIDs (ロキソニンなどの鎮痛薬)、抗リウマチ薬で治療を開始します。脊椎関節炎が主体の場合は、NSAIDsを使用します。病気の活動性が強い場合や骨変化を既に認めるような場合には、生物学的製剤やJAK阻害剤の使用を検討します。
抗リウマチ薬
- メトトレキサート (商品名: リウマトレックス)
- サラゾスルファピリジン (商品名: アザルフィジンEN)
生物学的製剤
➢TNF阻害剤
- インフリキシマブ (商品名: レミケード、インフリキシマブBS)
- アダリムマブ (商品名: ヒュミラ、アダリムマブBS)
- セルトリズマブ・ペゴル (商品名: シムジア)
➢IL-12/23阻害剤
- ウステキヌマブ(商品名: ステラーラ)
➢IL-23阻害剤
- グセルクマブ (商品名: トレムフィア)
- リサンキズマブ (商品名: スキリージ)
➢IL-17阻害剤
- セクキヌマブ (商品名:コセンテイクス)
- イキセキズマブ (商品名:トルツ)
- ブロダルマブ (商品名:ルミセフ)
- ビメキズマブ (商品名:ビンゼレックス)
JAK阻害薬
- ウパダシチニブ (商品名: リンヴォック)
生活上の注意
乾癬性関節炎の方は肥満やメタボリックシンドロームの合併が多いことが知られています。食事・運動療法は病気の活動性を抑えるだけでなく、健康な生活のためにも大切です。
当院での取り組み
乾癬の方は、通常皮膚科で診療を受けています。このような方の中で関節炎を発症した場合に当院に紹介されることがあります。逆に関節の痛みや腫れの原因を当院で調べていて乾癬関節炎が疑われた場合には、皮膚科に紹介することもあります。当院では皮膚科とも連携を取りながら、より良い医療の提供できるように努めています。