全身性硬化症(強皮症)

概要

全身性強皮症は、皮膚や内臓の臓器が硬くなる「線維化」を主な特徴とする、国の指定難病です。この病態は、体内の結合組織、特にコラーゲンが過剰に作られ、蓄積することで、本来柔軟であるべき組織が硬く厚くなる状態を指します。この線維化は、単に皮膚が硬くなるという表面的な変化に留まらず、肺、消化管、血管壁など全身の様々な臓器に影響を及ぼし、それぞれの臓器の機能や血行を障害します。

全身性強皮症における線維化は、単なる症状の一つではなく、臓器機能障害の根本的なメカニズムです。例えば、肺の線維化は呼吸機能の低下を招き、消化管の線維化は栄養吸収の障害につながります。病気の背景には、免疫の異常と血管の障害が複雑に関わっていると考えられており、これら「線維化」「血管障害」「免疫異常」の3つの病態が複雑に絡み合い、多様な症状を呈します。

レイノー現象について

全身性強皮症の患者の多くは、手足の血行が悪くなる「レイノー現象」を伴います。この現象は80%以上の患者で初発症状として現れることがあり、病気の早期発見において重要な手がかりとなります。冷たいものに触れたり、精神的な緊張を感じたりすると、手足の指が白く、次に紫色になり、温まると赤くなるという特徴的な色調変化を示します。しびれや痛みを伴うことも少なくありません。レイノー現象は、単なる血行不良の症状ではなく、全身性強皮症発症の数年前から現れる可能性のある、非常に重要な初期兆候です。

日本における患者数と疫学

日本には約2万人から3万人の全身性強皮症患者がいると推定されております。全身性強皮症は、特に30代から60代の女性に多く見られ、男女比は約1:7から1:12と女性に圧倒的に多いことが特徴です。

病型の分類:限局皮膚硬化型とびまん皮膚硬化型

全身性強皮症は、皮膚硬化の範囲によって大きく以下の2つのタイプに分けられます。この分類は、皮膚硬化の範囲だけでなく、病気の自然経過や予後予測、内臓病変の種類、そして関連する自己抗体にも相関する重要な指標です。病型診断は、治療戦略を決定する上で極めて重要であり、患者が自身の病型が将来の経過にどう影響するのかを理解する助けとなります。

限局皮膚硬化型(lcSSc)

皮膚の硬化が手指や顔、足など、比較的限られた範囲にとどまるタイプです。一般的に進行が比較的ゆっくりなことが多いですが、内臓病変を伴わないわけではありません。特にCREST症候群(皮膚の石灰化、レイノー現象、食道運動機能低下、手指の硬化、毛細血管拡張)は限局皮膚硬化型に多く見られます。

びまん皮膚硬化型(dcSSc)

皮膚の硬化が肘や膝を超えて体幹部まで広がるタイプです。このタイプは発症から数年以内(特に5〜6年以内)に内臓の病変が出現しやすい傾向があり、進行が速いため、しばしば早期の積極的な治療介入が必要とされます。

症状

全身性強皮症の症状は患者さんによって様々ですが、代表的なものには以下のようなものがあります。

皮膚の症状

レイノー現象

寒い場所に行ったり、精神的な緊張を感じたりすると、手足の指が白く、次に紫色になり、温まると赤くなる現象です。初めにこの症状が現れる方も多くいらっしゃいます。

皮膚硬化

指が腫れぼったい感じから始まり、徐々に皮膚が硬く、厚くなります。指輪が入りにくくなるなどで気づかれることもあります。進行すると皮膚硬化によって関節可動域が制限されます。皮膚潰瘍が形成され修復を繰り返し、手指に瘢痕性陥凹を形成します(図1)。

図1 手指の皮膚硬化。皮膚は硬化し関節の可動域制限をきたしている。手指に陥凹性瘢痕が多発している。

内臓の症状

肺の症状

肺が硬くなる「間質性肺疾患(肺線維症)」や、肺の血管の血圧が高くなる「肺高血圧症」などが起こることがあります。乾いた咳や息切れ、疲れやすさなどの症状が見られます。

消化管の症状

食道が硬くなり、胸やけや物がつかえる感じがすることがあります。また、腸の動きが悪くなり、便秘や下痢を繰り返すこともあります。

関節の症状

関節の痛みやこわばり、むくみなどが現れることがあります。

腎臓の症状

比較的まれですが、「強皮症腎クリーゼ」と呼ばれる急激な腎機能の悪化が起こることがあります。

診断

全身性強皮症の診断は、厚生労働省の診断基準 (表1) や国際的な分類基準 (表2) に基づいて、症状や検査結果を総合的に判断して行われます。

表1 全身性強皮症の診断基準:厚生労働省2010年
大基準 
手指あるいは足趾を超える皮膚硬化
小基準
1. 手指あるいは足趾に限局する皮膚硬化
2. 手指先端の陥凹性瘢痕あるいは指腹の萎縮
3. 肺基底部の線維症(両側性)
4. 抗トポイソメラーゼ抗体(抗Scl-70抗体)、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼIII抗体
診断
大基準を満たす場合、あるいは、小基準の1. および2. ~4. の1項目を満たす場合、診断する
・限局性強皮症(モルフィア)を除外する
・手指の所見は循環障害による、外傷などによるものを除く
ACR/EULARの全身性強皮症分類基準 (2013年)
項目スコア
皮膚硬化が両手のPIP関節を超えてMCP関節に至っている9
手指の皮膚硬化浮腫様の手指
PIPまででMCPに至っていない
2
4
手指指尖部末端部の皮膚潰瘍
陥凹性瘢痕
2
3
毛細血管拡張所見2
爪郭部毛細血管の異常2
肺動脈性肺高血圧症、間質性肺疾患の存在2
レイノー現象3
疾患特異抗体
抗セントロメア抗体
抗Scl-70抗体
抗RNAポリメラーゼIII抗体
3
診断
8つのカテゴリーの総和が9点以上で診断

検査

診断を確定するために、以下の検査が行われます。

血液検査

多くの患者さんで「自己抗体」(抗核抗体)という特殊な抗体が検出されます。この自己抗体の種類によって、病気のタイプや現れやすい症状の傾向が分かります。自己抗体は単なる診断に役立つだけでなく、病型分類、内臓病変のリスク、そして予後予測に役立つ「バイオマーカー」としての役割を持ちます。特定の自己抗体が特定の病型や内臓病変と強く関連しているため、患者さんの病状が将来どのように展開する可能性があるかを知る上で極めて重要な情報となります。

主要な自己抗体とその関連性

  • 抗Scl-70(トポイソメラーゼI)抗体:びまん皮膚硬化型に約30%の割合で陽性となり、肺線維症などの内臓病変と関連が深いとされています。
  • 抗セントロメア抗体:限局皮膚硬化型に30〜80%の割合で陽性となり、CREST症候群(皮膚の石灰化、レイノー現象、食道運動機能低下、手指の硬化、毛細血管拡張)との関連が強いとされています。
  • 抗RNAポリメラーゼIII抗体:びまん皮膚硬化型に陽性となることがあり、強皮症腎クリーゼとの関連が指摘されています。

画像検査

肺の状態を詳しく見るための胸部X線やCT検査、心臓の状態を見る心臓超音波検査、消化管の状態を見る内視鏡検査などが行われます。

その他

爪の付け根の毛細血管を観察する「キャピラロスコピー」という検査が、早期診断や病気の活動性を評価するのに役立つことがあります。

治療

全身性強皮症を完全に治す治療法はまだ確立されていませんが、病気の進行を抑え、症状を和らげるための様々な治療法が開発されています。治療は、患者の症状や病状に合わせて、最適な治療法が選択されます。

治療介入のタイミングと個別化された治療選択

皮膚硬化や間質性肺炎が急速に進行する場合、レイノー症状が強く末梢循環が悪い場合、関節症状が強い場合、肺高血圧や強皮症腎クリーゼの合併がある場合などに治療介入を開始します。症状が軽微な場合は経過観察することもあります。

疾患修飾療法

疾患修飾療法は、皮膚硬化、間質性肺炎、関節炎など、病気の本質的な進行を抑えることを目的とした治療法です。これらの薬剤は病気の根本的なプロセスに介入し、長期的な予後改善を目指すものです。

免疫抑制剤:免疫の異常な働きを抑える薬

  • メトトレキサート
  • シクロホスファミド
  • タクロリムス
  • リツキシマブ

などが選択されます。皮膚や肺が硬くなるのを抑える働きがあるとされています。

抗線維化剤:線維化を抑える薬

  • ニンテタニブ

が選択されます。特に肺の線維化の進行を抑える働きがあるとされています。

血管拡張薬

レイノー現象や肺高血圧症に対して血管を広げる薬を用います。

その他

消化器症状に対して胃酸を抑える薬や腸の動きを助ける薬それぞれの症状に合わせて治療が行われます。

生活上の注意

全身性強皮症と診断されたら、日常生活で以下の点に注意することで、症状の悪化を防ぎ、快適に過ごすことができます。

保温を心がける

レイノー現象の予防として、特に手足の指先を冷やさないようにしましょう。手袋や靴下などを活用し、体を冷やさない工夫が大切です。

禁煙

喫煙は血行を悪くするため、レイノー現象や皮膚潰瘍の悪化につながる可能性があります。

皮膚のケア

皮膚が硬くなると乾燥しやすくなります。保湿を心がけ、小さな傷でも早めに受診し、適切な処置を受けましょう。

食事

逆流性食道炎がある場合は、胃酸の分泌を刺激するような食事(アルコール、脂っこいもの、カフェイン、香辛料の強いものなど)を避け、消化の良いものをゆっくりとよく噛んで食べるように心がけましょう。
貧血や骨粗鬆症を併発しやすいので、鉄分、カルシウム、良質な蛋白質を積極的に摂取しましょう。
ステロイドを使用している場合は生活習慣病のリスクが高くなります。元々の病状や、使用している薬剤による慢性腎臓病のリスクも高まります。適切なカロリー摂取とバランスの良い食事を心がけ、生活習慣病の管理をしっかりと行いましょう。

睡眠

十分な睡眠時間を確保し、睡眠不足にならないように工夫しましょう。睡眠不足は症状を悪化させる要因となります。

運動

痛みが強い時には安静が第一ですが、薬物療法で痛みや腫れが落ち着いてきたらリウマチ体操などの運動療法を始めましょう。関節を動かすことで、痛みやこわばりを和らげ、筋力や関節の可動域を維持・向上させます。

物理療法

炎症が収まっているときには、関節をホットパックやパラフィン浴などの温熱療法が適しています。炎症が強く、痛みや晴れがあるときには患部を冷やしましょう。

感染の予防

感染症にかからないようにマスクの着用、手洗い、うがい、十分な睡眠、バランスの取れた食事を心がけましょう。

当院の特徴

  1. リウマチ専門医による診療
    当院では、関節リウマチ・膠原病診療に精通した経験豊富な専門医に加え、大学で教育・研究に携わる医師や教授の医師を含む、計11名の専門医が外来診療を担当しています。
    また、小児科専門医資格を有する医師 (毛利医師) も在籍しており、若年性特発性関節炎をはじめとする小児リウマチ性疾患(各種膠原病、自己炎症症候群など)にも対応可能です。
  2. 充実した検査体制
    ☑院内迅速検査として、以下の項目が即日に結果説明が可能です。
    尿検査
    血算(白血球・赤血球・血小板)、CRP
    血糖 (グルコース・HbA1c)
    Dダイマー
    各種感染症の抗原検査、PCR検査(インフルエンザやCOVID-19等)
    生化学検査 (肝機能・腎機能・電解質・脂質など) (※2025年11月15日開始)。

    ☑生理学的検査としては、心臓、消化器、内分泌・代謝、リウマチ専門医による超音波検査が可能です。
    心電図
    肺機能検査
    血管伸展性検査
    各臓器別専門医による超音波 (エコー) 検査

    ☑画像検査としては、CT、MRI検査まで備えていることが当院の特徴です。
    レントゲン検査
    骨密度検査 (DXA法)
    CT検査
    MRI検査

    これらの検査体制により、各臓器の合併症や治療に伴う副作用の全身的な評価を必要に応じて行うことができ、診断・治療・副作用対応までを院内で完結できる体制を整えています。
  3. 全身疾患であるリウマチ膠原病疾患の臓器合併症に対応
    リウマチ・膠原病疾患は全身疾患です。当院では、循環器呼吸器消化器内分泌・代謝の専門外来も行っており、患者様を都度他病院にご紹介することなく、クリニック内で全身の合併症の評価が可能です。
  4. 治療に伴う副作用の診断・治療に対応
    リウマチ・膠原病の治療では、ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤を中心とした薬物療法が主体となりますが、これらはいずれも感染症、骨髄抑制、肝機能障害、腎機能障害など、多様な副作用を伴う可能性があります。特にステロイドは、感染症のほか、糖代謝・脂質代謝異常や骨粗鬆症など全身への影響がみられることがあります。
    当院では、こうした治療関連有害事象に対しても、院内検査体制を活かした早期診断と、各科専門医との連携による多角的な対応が可能です。外来での対応が困難な場合には、速やかに高度医療機関への紹介を行う体制を整えています。リウマチ・膠原病診療における安全性と有効性の両立を目指し、継続的なモニタリングと副作用管理を行っています。

まとめ

当院は埼玉県所沢市にあり、狭山・入間・川越など近隣地域に加えて、清瀬市・東久留米市・小平市など東京都西部からも多くの方にご来院いただいています。
リウマチ・膠原病診療において、私たちは安全性と有効性を両立した医療の提供を目指しています。
各分野の専門医が連携し、早期診断から長期管理まで一貫した体制で診療を行っています。

リウマチ・膠原病は、長く付き合っていく必要のある病気ですが、適切な治療と定期的なフォローにより、より快適に過ごすためのサポートが可能です。
当院では、患者さんが安心して治療を続けられるよう、専門医チームがサポートいたします。

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