概要
体軸性脊椎関節炎は仙腸関節のX線基準(強直性脊椎炎のための改訂New York基準)を満たす体軸性脊椎関節炎(radiographic axial spondyloarthritis; r-axSpa)とX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(non-radiographic axial spondyloarthritis; nr-axSpa)に大別されます。r-axSpaの代表的疾患が強直性脊椎炎です。強直性脊椎炎は基本的には45歳以下で発症し、男女比は2:1で男性に多く、HLA-B27陽性、リウマトイド因子は陰性、血沈の亢進とCRP上昇を認めます。脊椎の強直が主な症状で、臀部痛、頑固な腰痛、背部痛など不定愁訴的な症状が多く診断までに数年を要する例が多い。2023年に全国疫学調査が実施され、推定患者数は強直性脊椎炎が4,600人、nr-axSpaが1,600人でした。体軸性脊椎関節炎は本邦ではまれな疾患であると考えられます。HLA-B27を保有していると必ず強直性脊椎炎を発症するわけでなく、HLA-B27保有者の約5%程度で発症するとされています。
症状
強直性脊椎炎の特徴的な症状は炎症性背部痛です。一般的な腰痛と異なり、安静で増悪し、運動で軽快するのが特徴です。体軸関節以外に股、膝、肩など四肢の大関節に疼痛や運動制限がしばしば起きます。また胸骨肋骨接合部、腸骨稜、坐骨結節、大転子、踵骨、アキレス腱付着部などの付着部に痛みやこわばりを生じます。アキレス腱付着部炎は腫れが目立ちます。骨関節外症状として、片側の前部ぶどう膜炎が約25%の強直性脊椎炎の患者でみられ、炎症性腸疾患(クローン病と潰瘍性大腸炎)、乾癬、大動脈弁閉鎖不全症などの心血管疾患が認められることがあるので注意が必要です。
検査所見
仙腸関節単純X線基準が重要なウェイトを占め、関節変化がgrade 0から4まで5段階に分類され、両側grade 2以上あるいは片側grade 3以上で仙腸関節炎陽性と診断され、強直性脊椎炎を疑います。仙腸関節は正面像のみでは判断が難しい症例があり、仙腸関節斜位像やMRI画像を参照にすることが勧められます。MRIにおいて仙腸関節の活動性炎症病変の定義は、軟骨下骨髄浮腫、骨炎の存在が必須です。STIR像、T2強調像(脂肪抑制)もしくは造影剤増強脂肪抑制T1強調像で高信号を呈し、T1強調像で高信号を呈します。
炎症を反映して、CRPの上昇や赤沈の亢進がみられることもありますが、非特異的な所見です。
診断
強直性脊椎炎の診断には1984年改訂NY基準(表1)を用います。具体的には、診察によって前屈や側屈をした時の背骨の曲がりにくさを調べたり、大きく深呼吸した時に胸郭が膨らむかどうかを調べたりします。X線検査が診断に必要です。強直性脊椎炎には特異的な臨床検査はありません。リウマトイド因子、抗CCP抗体や抗核抗体は通常陰性です。活動性期の患者では血沈の亢進やCRPの増加を認めますが、活動性であってもこれらが正常値を示すこともあります。HLA-B27は本疾患と密接な関連が示されているので有用な検査ですが、保険適応となっていません。
| 臨床症状 |
| 1. 3か月以上続く腰痛。運動により改善し、安静により改善しない。 |
| 2. 腰椎可動域制限(Schober 試験で5cm以下) |
| 3. 胸郭拡張制限 |
| 仙腸関節のX線 |
| grade 0:正常 |
| grade 1:疑い変化 |
| grade 2:軽度の異常:小さな限局性の骨のびらん、硬化像 |
| grade 3:明らかな異常:骨びらん・硬化の進展と関節裂隙の幅の変化 |
| grade 4:著しい異常:関節裂隙全体の完全な強直 |
| 診断基準 |
| 1. 確実例 臨床症状のうちの1項目以上+仙腸関節のX線所見 |
| 2. 疑い例 a)臨床症状3項目 b)臨床症状なし+仙腸関節のX線所見 |
治療
第一選択薬は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)です。最大容量で使用し、効果があれば継続します。抗リウマチ薬は体軸関節には無効であり、末梢関節炎を合併している場合はサラゾスルファピリジンが有効な場合があります。メトトレキサートの有効性は証明されていません。こうした薬剤で十分な症状の改善が認められない場合は、抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ)、抗IL-17抗体(セクキヌマブ、イキセクズマブ、ビメキズマブ)、JAK阻害剤(ウパダシチニブのみ)が考慮されます。抗TNF-α抗体製剤と抗IL-17抗体製剤は注射製剤で、JAK阻害剤は内服製剤です。
生活上の注意
背骨が曲がらないように姿勢を意識することが大切です。また座りっぱなしや立ちっぱなしを避け、こまめに体を動かすように心がけましょう。朝晩に首、胸郭を動かすストレッチを行うことで柔軟性を保ち、こわばりを防ぎます。喫煙は炎症を悪化させるため禁煙が推奨されます。肥満も関節への負担になるため、適切な体重管理が重要です。
食事
貧血や骨粗鬆症を併発しやすいので、鉄分、カルシウム、良質な蛋白質を積極的に摂取しましょう。
ステロイドを使用している場合は生活習慣病のリスクが高くなります。また、使用している薬剤によっては、慢性腎臓病のリスクも高まります。適切なカロリー摂取とバランスの良い食事を心がけ、生活習慣病の管理をしっかりと行いましょう。
睡眠
十分な睡眠時間を確保し、睡眠不足にならないように工夫しましょう。睡眠不足は症状を悪化させる要因となります。
運動
痛みが強い時には安静が第一ですが、薬物療法で痛みや腫れが落ち着いてきたらリウマチ体操などの運動療法を始めましょう。関節を動かすことで、痛みやこわばりを和らげ、筋力や関節の可動域を維持・向上させます。
物理療法
炎症が収まっているときには、関節をホットパックやパラフィン浴などの温熱療法が適しています。炎症が強く、痛みや晴れがあるときには患部を冷やしましょう。
感染の予防
感染症にかからないようにマスクの着用、手洗い、うがい、十分な睡眠、バランスの取れた食事を心がけましょう。
当院の特徴
- リウマチ専門医による診療
当院では、関節リウマチ・膠原病診療に精通した経験豊富な専門医に加え、大学で教育・研究に携わる医師や教授の医師を含む、計11名の専門医が外来診療を担当しています。
また、小児科専門医資格を有する医師 (毛利医師) も在籍しており、若年性特発性関節炎をはじめとする小児リウマチ性疾患(各種膠原病、自己炎症症候群など)にも対応可能です。 - 充実した検査体制
☑院内迅速検査として、以下の項目が即日に結果説明が可能です。
・尿検査
・血算(白血球・赤血球・血小板)、CRP
・血糖 (グルコース・HbA1c)
・Dダイマー
・各種感染症の抗原検査、PCR検査(インフルエンザやCOVID-19等)
・生化学検査 (肝機能・腎機能・電解質・脂質など) (※2025年11月15日開始)。
☑生理学的検査としては、心臓、消化器、内分泌・代謝、リウマチ専門医による超音波検査が可能です。
・心電図
・肺機能検査
・血管伸展性検査
・各臓器別専門医による超音波 (エコー) 検査
☑画像検査としては、CT、MRI検査まで備えていることが当院の特徴です。
・レントゲン検査
・骨密度検査 (DXA法)
・CT検査
・MRI検査
これらの検査体制により、各臓器の合併症や治療に伴う副作用の全身的な評価を必要に応じて行うことができ、診断・治療・副作用対応までを院内で完結できる体制を整えています。 - 全身疾患であるリウマチ膠原病疾患の臓器合併症に対応
リウマチ・膠原病疾患は全身疾患です。当院では、循環器、呼吸器、消化器、内分泌・代謝の専門外来も行っており、患者様を都度他病院にご紹介することなく、クリニック内で全身の合併症の評価が可能です。 - 治療に伴う副作用の診断・治療に対応
リウマチ・膠原病の治療では、ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤を中心とした薬物療法が主体となりますが、これらはいずれも感染症、骨髄抑制、肝機能障害、腎機能障害など、多様な副作用を伴う可能性があります。特にステロイドは、感染症のほか、糖代謝・脂質代謝異常や骨粗鬆症など全身への影響がみられることがあります。
当院では、こうした治療関連有害事象に対しても、院内検査体制を活かした早期診断と、各科専門医との連携による多角的な対応が可能です。外来での対応が困難な場合には、速やかに高度医療機関への紹介を行う体制を整えています。リウマチ・膠原病診療における安全性と有効性の両立を目指し、継続的なモニタリングと副作用管理を行っています。
当院での取り組み
当クリニックでは11人のリウマチ専門医が診療に当たり、強直性脊椎炎に対する多くの診療実績があります。診断の難しい症例に対しては、MRI検査を実施し診断の精度を高めています。早期診断、早期治療を行い、変形を防ぐことが重要です。進行した方や重症の方を中心に積極的に生物学的製剤の導入を試みています。
まとめ
当院は埼玉県所沢市にあり、狭山・入間・川越など近隣地域に加えて、清瀬市・東久留米市・小平市など東京都西部からも多くの方にご来院いただいています。
リウマチ・膠原病診療において、私たちは安全性と有効性を両立した医療の提供を目指しています。
各分野の専門医が連携し、早期診断から長期管理まで一貫した体制で診療を行っています。
リウマチ・膠原病は、長く付き合っていく必要のある病気ですが、適切な治療と定期的なフォローにより、より快適に過ごすためのサポートが可能です。
当院では、患者さんが安心して治療を続けられるよう、専門医チームがサポートいたします。