関節リウマチ

概要

関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA) は、日本人の約80万人が罹患する自己免疫性疾患です。関節炎による関節の腫脹と疼痛を来たします。炎症の主座は滑膜炎にあり、それが持続すると関節の破壊・変形が進行します。発症には遺伝的要因と環境要因(喫煙や肥満など)が関与しています。女性が男性の4倍ほど多く、発症が最も多い年齢は40~50歳代でしたが、近年では65歳以上で発症する高齢発症関節リウマチが増えています。血液中のリウマチ因子や抗CCP抗体とよばれる自己抗体が多くの患者で陽性となります。関節症状以外に、呼吸器合併症、虚血性心疾患、悪性リンパ腫、骨粗鬆症、血管炎などのさまざまな関節外症状、合併症がみられることがあります。

症状

RAの症状の中心にあるのは多発性、持続性、破壊性の関節炎による症状です。病初期には、朝の手のこわばり、手首、手指の腫れぼったさ、動作時の関節痛などの自覚症状で始まります。続いて持続的な関節痛がみられるようになり、さらに関節の腫脹を伴うと、他覚的にも関節炎が確認されるようになります。90%以上の人が、手関節や手足の指の小関節に症状がみられ、ほかに膝、肘、肩、足首などにも痛みがでます。RAでは最初から多発性の関節炎で始まる場合もあるが、単関節炎のこともあります。高齢発症関節リウマチでは肩関節などの大関節に罹患することが多く、リウマチ性多発筋痛症との鑑別が必要な場合もあります。

診断

長らく1987年のアメリカリウマチ学会で作成された基準をもとに診断されてきました。しかし、近年の検査法や治療薬の著しい進歩により、より早期のRAを診断する必要が生じてきました。2010年に欧米を中心に基準が改訂されました(ACR/EULAR 2010年分類基準)(table1とtable2)。この基準は、腫れや痛みのある関節炎の数、期間、リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体の有無と程度、炎症反応の有無によってスコア化して判断します。

ACR/EULAR 2010年分類基準

table 1 対象集団

1か所以上の関節に明確な臨床的滑膜炎がみられる
滑膜炎をより妥当に説明する他の疾患が見当たらない
(SLE、乾癬、痛風などの除外)

table 2 スコア(A~Dを合計)

A:罹患関節スコア備考
大関節1か所0肩、肘、股、膝、足
大関節
2-10ヵ所
1
小関節
1-3ヵ所
2PIP, MCP, 2-5MTP, 手関節
小関節
4-10ヵ所
3
11ヵ所以上
(1ヵ所以上の小関節)
5顎、胸鎖、肩鎖関節も含む
B:血清学的検査
RF、抗CCP抗体陰性0
いずれか低値陽性2
いずれか高値陽性3いずれか低値陽性
C:急性期反応物質
CRP正常、ESR正常0
いずれかが異常1
D:症状の持続
6週未満0
6週以上1
*スコア6/10以上で、関節リウマチと分類して良い

血液検査

RFはRA患者において感度75.9%、特異度78.7%で検出される自己抗体です。RAの診断には必須の検査です。しかし、RF陰性のRA患者も約20%にみられ、また健常者においても5~15%にRF陽性がみられます。抗CCP抗体は、RA患者において感度78.5%、特異度95.9%で検出される自己抗体です。抗CCP抗体陽性のRA患者は、陰性例と比べて関節破壊や身体的機能障害の悪化が進みやすいことが報告されており、RAの予後不良因子そして重要です。関節の炎症を反映してCRPや赤沈などの炎症反応やMMP-3が高値となることも重要な所見のひとつです。

画像検査

X線検査では、RAが進行すると関節周囲の骨粗鬆症に加えて、関節裂隙の狭小化、骨びらん、強直などがみられます。しかし、RA発症の初期(図1、図3)ではこうしたX線の変化はほとんどみられません。関節エコー検査(図2)やMRI検査(図4)を用いるとX線検査では認めることのできないRAの早期の変化である活動性滑膜炎や骨びらんを確認することができるので、RAの早期診断と早期治療につながります。

治療

RAに対する治療薬には痛みを和らげるための薬、ステロイド剤そして免疫の異常に働きかける抗リウマチ薬があります。抗リウマチ薬には免疫抑(修飾)制剤と2003年より使用可能となった生物学的製剤と2013年より使用可能となったJAK阻害薬があります。RAでは発症後2年以内に関節破壊が急速に進行することが分かってきたので、通常は診断後にはすみやかに禁忌事項がなければ免疫抑制剤の一つであるメトトレキサートによる治療を開始し、寛解を目指します。メトトレキサートで3か月治療しても効果が十分に得られない場合には、生物学的製剤やJAK阻害剤を追加します。治療についての詳細は関節リウマチの薬物療法をご覧ください。

生活上の注意

食事

貧血や骨粗鬆症を併発しやすいので、鉄分、カルシウム、良質な蛋白質を積極的に摂取しましょう。

睡眠

十分な睡眠時間を確保し、睡眠不足にならないように工夫しましょう。睡眠不足は症状を悪化させる要因となります。

運動

痛みが強い時には安静が第一ですが、薬物療法で痛みや腫れが落ち着いてきたらリウマチ体操などの運動療法を始めましょう。関節を動かすことで、痛みやこわばりを和らげ、筋力や関節の可動域を維持・向上させます。

物理療法

炎症が収まっているときには、関節をホットパックやパラフィン浴などの温熱療法が適しています。炎症が強く、痛みや晴れがあるときには患部を冷やしましょう。

感染の予防

感染症にかからないようにマスクの着用、手洗い、うがい、十分な睡眠、バランスの取れた食事を心がけましょう。

当クリニックの取り組み

当クリニックでは11人のリウマチ専門医が診療に当たり、関節リウマチに対する多くの診療実績があります。診断の難しい症例に対しては関節エコー検査や関節MRI検査を実施し診断の精度を高めています。メトトレキサートによる基礎的治療からすべての生物学的製剤やJAK阻害剤の使用が可能ですが、患者さんの症状やライフスタイルに合わせた治療計画を立て、安心して治療を受けていただけるよう、きめ細やかなサポートを提供してまいります。

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