代表的な関節リウマチ疾患活動性評価には、DAS28, SDAI, CDAI, Boolean (ブーリアン)といった総合的な指標が用いられます。これらの指標は、あらかじめ指定された28の関節の中で (図1)、圧痛関節数や腫脹関節数、患者による評価、医師による評価そして血液検査 (CRPや血沈)を組み合わせて算出され、病気の勢いを客観的に評価します。表1に各評価方法の特徴をまとめました。

DAS28 (Disease Activity Score 28)
評価項目
- 圧痛関節数 (Tender Joint Count): TJC (28関節中)
- 腫脹関節数 (Swollen Joint Count): SJC (28関節中)
- CRPまたはESR (血沈)
- 患者による全般評価 (VAS: Visual Analog Scale)
計算式(ESR版の例)
DAS28 ESR=0.56x√TJC + 0.28x√SJC + 0.70LN(ESR) + 0.014VAS
LN:自然対数、ESR:血沈(mm/hr)、VAS:患者による全般評価(0-100mm)
評価基準
- DAS28 ESR>5.1: 高疾患活動性
- 3.2≤ DAS28-ESR ≤5.1:中疾患活動性
- 2.6≤ DAS28-ESR <3.4: 低疾患活動性
- DAS28-ESR <2.6: 寛解
SDAI (Simplified Disease Activity Index)
評価項目
- 圧痛関節数 (Tender Joint Count): TJC (28関節中)
- 腫脹関節数 (Swollen Joint Count): SJC (28関節中)
- 患者による全般評価VAS
- 医師による全般評価VAS
- CRP値 (mg/dL)
計算方法
各項目の合計値 (TJC+SJC+患者VAS+医師VAS+CRP)
評価基準
- SDAI >26: 高疾患活動性
- 11< SDAI ≤ 26: 中疾患活動性
- 3.3< SDAI ≤ 11: 低疾患活動性
- SDAI ≤3.3: 寛解
CDAI (Clinical Disease Activity Index)
評価項目
- 圧痛関節数 (Tender Joint Count): TJC (28関節中)
- 腫脹関節数 (Swollen Joint Count): SJC (28関節中)
- 患者による全般評価VAS
- 医師による全般評価VAS
計算方法
各項目の合計値 (TJC+SJC+患者VAS+医師VAS)
評価基準
- CDAI >22: 高疾患活動性
- 10< CDAI ≤ 22: 中疾患活動性
- 2.8< CDAI ≤ 10: 低疾患活動性
- CDAI ≤2.8: 寛解
Boolean(ブーリアン)寛解
以下の4つの項目がすべて満たされた場合に達成されたとみなします
- 圧痛関節数:1以下
- 腫脹関節数:1以下
- 患者によるVAS (0-10cm):1cm以下
- CRP (mg/dL):1mg/dL以下
指標名 | 評価方法 | 寛解基準 | 利点 | 注意点 |
DAS28-ESR | 28関節の圧痛・腫脹関節数にESR、VASを加味して算出 | DAS28-ESR < 2.6 | 世界的に広く使われ、 臨床試験で標準 | 寛解の基準が緩め |
SDAI | 28関節の圧痛・腫脹関節数に医師VASとCRPを加えた簡易スケール | SDAI ≤3.3 | 計算が簡単で、 臨床現場で使いやすい | CRPが必要なため、 即時評価に不向き |
CDAI | SDAIからCRPを除く | CDAI ≤2.8 | 血液検査不要で、 すぐに評価可能 | CRPを含まず、 炎症の把握に限界 |
Boolean寛解 | 圧痛、腫脹関節、患者VAS、CRPすべてが1以下 | 全項目 1以下 | 最も厳格な寛解基準。 真の寛解を反映する。 | 達成困難で、臨床応用は 注意が必要 |
ご自身の病状を把握しましょう
関節リウマチの治療では、「いま病気がどのくらい勢いがあるか」を定期的に確認することがとても大切です。
この評価は、症状の変化を数値で示すことで、感覚的ではなく客観的に病状を把握するための手がかりになります。
しかも、疾患活動性の評価は、医師が一方的に行うものではありません。
「患者さんと医療者が一緒に、いまの状態を確認するための共通言語」でもあります。
治療を続ける中で、「良くなっている」「少し悪化している」などの変化を正確に捉え、最適な治療を選ぶために、ぜひ積極的にご自身の数値にも関心を持ってみてください。こうすることで、
- 現在の病状がどの程度落ち着いているのかを知る
- 寛解(かんかい:炎症がほとんどない状態)に近づいているかを確認する
- 今の治療を続けるべきか、見直すべきかを判断する
といった、治療の方向づけに役立ちます。
高血圧の方が日々血圧を測って変化を管理するように、関節リウマチの方にとっても、疾患活動性を定期的に確認することは、病気をコントロールする第一歩です。自身の活動性を知ることで、治療の意味や目標がより明確になります。