お知らせ

2026年4月1日より、65歳を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種が、ニューモバックス®NP(PPSV23)からプレベナー20®(PCV20)へ変更となりました。当院より最新情報をお届けします。

肺炎球菌感染症とはどんな病気?

肺炎球菌は鼻やのどの奥に常在する細菌で、免疫力が低下したときに気道の奥にある肺胞に炎症を起こし、肺炎・菌血症・髄膜炎などの重篤な感染症を引き起こします。特に65歳以上の高齢者、基礎疾患のある方、免疫抑制剤やステロイドを使用している方では重症化リスクが高く、注意が必要です。

体調を崩して免疫力が低下したときなどに感染しやすく、普段は元気に過ごしている方でも発症する可能性があります。日常の手洗い・うがいに加え、肺炎球菌ワクチンの接種が重要な予防策のひとつです。

特に重症化しやすい方(リスクファクター)

  • 65歳以上の方
  • 慢性心疾患・慢性肺疾患・慢性肝疾患・慢性腎疾患のある方
  • 糖尿病のある方
  • 関節リウマチ・自己免疫性疾患などで免疫抑制剤・生物学的製剤・ステロイドを使用中の方
  • 固形がん・血液がん・化学療法中の方
  • 喫煙者

なお、これまで10年間の高齢者肺炎球菌ワクチンの定期接種率は約40%前後にとどまっています(厚生労働省)。肺炎は高齢者の主要な死亡原因のひとつです。対象の方はぜひ積極的な接種をご検討ください。

ワクチンの種類と今回の変更点

肺炎球菌ワクチンには大きく「多糖体ワクチン(PPSV)」と「コンジュゲートワクチン(結合型ワクチン、PCV)」の2種類があります。両者の最大の違いは「免疫記憶」が形成されるかどうかにあります。

コンジュゲートワクチンは、肺炎球菌の莢膜多糖体をキャリアタンパクに結合させることで、T細胞とB細胞の両方を活性化します。これによりメモリーB細胞(免疫記憶細胞)が誘導され、将来同じ菌が侵入した際に素早く抗体を産生できる「免疫記憶」が形成されます。これが、従来の多糖体ワクチンとの大きな違いです。

なお、結合型ワクチンであっても、接種時の年齢が高くなるほどワクチンの予防効果は低下する傾向が報告されています。オランダで65歳以上の方を対象に行われた大規模な臨床試験(CAPiTA試験)の事後解析では、65歳時点の接種で予防効果65%であったのに対し、75歳時点では40%に低下しました。65歳のタイミングでの接種が効果的ですので、対象年齢になったら早めの接種をお勧めします。

各ワクチンの特徴

ニューモバックス®NP(PPSV23・23価)

23種類の血清型に対応する多糖体ワクチンです。B細胞のみを活性化するため、T細胞を介した免疫記憶(メモリーB細胞)が形成されにくく、接種から5年程度で効果が低下するとされてきました。そのため、従来は5年ごとの再接種が行われてきました。2026年3月までは65歳の定期接種ワクチンでしたが、4月以降は定期接種から除外されています。

なお、「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会合同委員会、2026年4月)」において、高齢者における結合型ワクチン(PCV)の利用が拡充されたことから、ニューモバックス同士の再接種は原則として選択肢としないこととされました。以前にニューモバックスを打った方は、次の選択肢として結合型ワクチン(プレベナー20またはキャップバックス)への切り替えをご検討ください。

プレベナー20®(PCV20・20価)

20種類の血清型に対応するコンジュゲートワクチンです。莢膜多糖体をキャリアタンパクに結合させることでT細胞とB細胞の両方を活性化し、メモリーB細胞による「免疫記憶」が形成されます。同じ菌が再侵入した際に素早く抗体を産生できるのが大きな特徴です。

効果の持続期間については、第8版ガイドラインにおいて「5年程度」と推定されています。従来のニューモバックスのように定期的に5年ごとの再接種を繰り返す必要はありませんが、ガイドラインでは接種後5年以降の再接種が必要となる可能性も指摘しています。ただし、現時点ではPCV20接種後の再接種に関する免疫原性・安全性のデータはなく、今後の研究で方針がさらに更新される可能性があります。

2026年4月から65歳の定期接種ワクチンとなり、接種券を使って公費で接種できます。

キャップバックス®(PCV21・21価)

2025年8月に国内で高齢者とハイリスク者に対して薬事承認された最新のコンジュゲートワクチンで、21種類の血清型に対応します。プレベナー20とは含まれる血清型の構成が一部異なり、特に近年日本で増加している血清型(15A、15C、16F、23A、23Bなど)をカバーしている点が特徴です。

厚生労働省研究班による成人の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)サーベイランスデータ(2022〜2024年)では、国内の65歳以上のIPDに対する血清型カバー率はキャップバックスが約78%、プレベナー20が約50%です。なお、肺炎球菌性肺炎を対象とした多施設共同研究(2019〜2022年)では、65歳以上のカバー率はキャップバックス約72%、プレベナー20約43%と報告されており、対象疾患により数値が異なる点にご留意ください。

プレベナー20と同様に効果の持続は5年程度と推定されており、接種後5年以降の再接種が必要となる可能性が考えられていますが、再接種に関するデータはまだありません。現時点では任意接種のみで全額自己負担となりますが、現在、定期接種化に係る検討が進められています。

出典:小児・成人の侵襲性肺炎球菌感染症の疫学情報(厚生労働省研究班)/65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会合同委員会、2026年4月)参照

以前にニューモバックスを接種した方へ

過去にニューモバックスを接種したことがある方は、定期接種(公費)の対象外となりますが、任意接種としてプレベナー20またはキャップバックスを受けることができます。接種の際は、ニューモバックスの最終接種から1年以上あけることが必要です(「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方」第8版、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会合同委員会、2026年4月)。

また、過去にPCV13やPCV15、PCV20などの結合型ワクチンを接種したことがある方も、前回の接種から1年以上の間隔を置いて、PCV20またはPCV21を任意接種として受けることができます。

肺炎球菌ワクチン未接種の方の選択肢

これまでにニューモバックス・結合型ワクチンのいずれも接種したことがない方で、65歳の者等および60歳以上65歳未満で日常生活が極度に制限される程度の基礎疾患を有する方は、プレベナー20の定期接種の対象となります。

定期接種の対象とならない方は、任意接種としてプレベナー20またはキャップバックスを選択できます。また、PCV15を接種した後に1〜4年の間隔を置いてニューモバックスを追加する「PCV15-PPSV23連続接種」も選択肢のひとつとして示されています。ご自身に最適な接種方法については、外来でご相談ください。

所沢市での定期接種について

詳しくは、こちらのHPをご確認ください。

免疫抑制剤投与中の方へ

当院では関節リウマチなどの自己免疫疾患の患者さんが多く通院されています。生物学的製剤・免疫抑制剤・ステロイドを使用中の方は、肺炎球菌感染症のハイリスク群に該当します。

「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会合同委員会、2026年4月)」では、こうした免疫不全状態のある患者さんにはPCV20またはPCV21の接種、あるいはPCV15-PPSV23の連続接種が推奨されています。また、感染リスクを考慮してPCV15接種後1年以内のPPSV23接種を検討することも考えられるとされています。

なお、免疫抑制剤や生物学的製剤使用中の方でもワクチン接種は可能ですが、接種のタイミングについては主治医と相談のうえ決定することが重要です。ご不明な点はお気軽に外来でお申し出ください。

当院の紹介

ひろせクリニックは埼玉県所沢市にあり、西武新宿線の新所沢駅が最寄りです。当院では関節リウマチ・膠原病の診療を11名の専門医が担当しています。全身疾患であるリウマチ・膠原病の管理を万全に行うため、一般内科・小児科に加え、循環器、消化器、内分泌・代謝、呼吸器、泌尿器科など各分野の医師とも連携した診療を行っています。

予防接種については、ほとんどの定期・任意の予防接種に対応しております。お気軽にご相談ください。


参考文献

  1. 日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会合同委員会. 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版). 2026年4月1日.
  2. 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会. 第71回会議資料. 2025年10月23日.
  3. ファイザー株式会社. プレベナー20®水性懸濁注 添付文書. 2026年2月作成.
  4. ファイザー株式会社. 肺炎球菌感染症について知っておきたいこと(患者向け資料). 監修:迎 寛 教授(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野).
  5. Haranaka M, et al. A phase 3 randomized trial of the safety and immunogenicity of 20-valent pneumococcal conjugate vaccine in adults 60 years of age in Japan, South Korea, and Taiwan. Vaccine. 2024;42:1071-7.
  6. Tamura K, et al. Dynamic changes in clinical characteristics and serotype distribution of invasive pneumococcal disease among adults in Japan after introduction of the pediatric 13-valent pneumococcal conjugate vaccine in 2013-2019. Vaccine. 2022;40:3338-44.
  7. Pollard AJ, et al. Maintaining protection against invasive bacteria with protein-polysaccharide conjugate vaccines. Nat Rev Immunol. 2009;9:213-220.
  8. van Werkhoven CH, et al. The impact of age on the efficacy of 13-valent pneumococcal conjugate vaccine in elderly. Clin Infect Dis. 2015;61:1835-8.

※本コラムは一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の医療行為を推奨するものではありません。接種の適否については必ず担当医にご相談ください。情報は2026年4月時点のものです。

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