お知らせ

帯状疱疹ワクチンについて

帯状疱疹とはどんな病気?

帯状疱疹は、子どもの頃にかかった「水ぼうそう(水痘)」のウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス:VZV)が原因で起こる病気です。水ぼうそうが治った後もウイルスは体の中の神経節に潜んでおり、加齢や疲労、ストレスなどで免疫力が低下すると再び活性化し、帯状疱疹を発症します。

体の片側に帯状の赤い発疹と強い痛みが現れるのが特徴で、顔面に発症した場合は視力低下や難聴を起こすこともあります。特に問題となるのが帯状疱疹後神経痛(PHN)という後遺症で、発疹が治った後も数ヵ月〜数年にわたって強い痛みが続くことがあります。

日本人では80歳までに約3人に1人が帯状疱疹にかかるといわれており、特に50歳を過ぎると発症リスクが急激に高まります。

特に発症リスクが高い方

  • 50歳以上の方
  • 関節リウマチ・自己免疫性疾患などで免疫抑制剤・生物学的製剤・ステロイドを使用中の方
  • 糖尿病のある方
  • がん治療中(化学療法・放射線療法)の方
  • 造血幹細胞移植後の方
  • 疲労やストレスが蓄積している方

2025年4月から帯状疱疹ワクチンが定期接種になりました

2025年4月より、帯状疱疹ワクチンが予防接種法に基づく定期接種(B類疾病)となりました。これにより、対象の方は公費助成を受けてワクチンを接種できるようになっています。

定期接種の対象者

  • その年度内に65歳になる方
  • 経過措置(2025〜2029年度の5年間)として、その年度内に70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方
  • 2025年度に限り、100歳以上の方は全員対象
  • 60〜64歳でHIV感染による免疫機能障害があり、日常生活がほとんど不可能な方

定期接種には生ワクチンシングリックス®(不活化ワクチン)のいずれかを選ぶことができます。

なお、すでに帯状疱疹ワクチンの接種を完了している方(自費接種を含む)は、原則として定期接種の対象外です。ただし、医師が再度接種の必要があると認めた場合は対象となる場合があります。

ワクチンの種類と違い

現在、日本で接種できる帯状疱疹ワクチンは2種類あります。

シングリックス®(不活化ワクチン・GSK社)

シングリックスは、ウイルスの一部(組換えタンパク)だけを使った不活化ワクチンです。ウイルスそのものは含まれていないため、免疫機能が低下している方にも接種が可能です。

効果を高めるための「アジュバント(AS01B)」という成分が含まれており、強い免疫応答を引き出すことができます。2ヵ月の間隔をあけて2回の接種が必要です(1回目から2ヵ月を超えた場合でも、6ヵ月以内に2回目を接種します)。

発症予防効果は、接種後1年時点で9割以上、5年時点で9割程度、10年時点で7割程度と高い予防効果が報告されており、帯状疱疹後神経痛(PHN)の予防効果も接種後3年時点で90%以上と報告されています。

効果の持続についても追跡調査が行われており、接種後少なくとも10年間は予防効果が持続することが確認されています。

乾燥弱毒生水痘ワクチン(生ワクチン・ビケン)

もともと子どもの水ぼうそう予防に使われてきた生ワクチンを、帯状疱疹予防にも使用するものです。1回の接種で完了し、費用もシングリックスより安価です。

ただし、病原性を弱めたウイルスそのものを使っているため、免疫抑制剤や生物学的製剤を使用中の方など、免疫機能が低下している方には接種できません。帯状疱疹の発症予防効果は約50%程度で、効果の持続も5年程度とされています。PHNの予防効果は、接種後3年時点で60%程度と報告されています。

二つのワクチンの比較

不活化ワクチン
(シングリックス®)
生ワクチン
接種回数2回1回
発症予防効果
接種後5年時点
約9割程度約4割程度
効果の持続期間少なくとも10年以上約5年
PHN予防効果
接種後3年時点
9割以上6割程度
免疫低下者への接種可能不可能
副反応注射部位の痛み・腫れが多い
(多くは3日以内に軽快)
比較的少ない
費用(定期接種)
所沢市の場合
18150円
2回で36300円
4950円
費用は所沢市のHP「帯状疱疹予防接種について」を参照。2026年4月19日時点。

※定期接種の自己負担額は自治体により異なります。上記は所沢市の金額です。任意接種(50歳以上で定期接種の対象外の方)の場合は全額自己負担となります。

シングリックスの副反応について

シングリックスは強い免疫応答を引き出すワクチンであるため、副反応の頻度はやや高めです。主なものは以下のとおりです。

  • 注射部位の痛み:約80%
  • 注射部位の発赤・腫脹:約20〜30%
  • 筋肉痛・倦怠感:約30〜40%
  • 頭痛:約20〜30%
  • 発熱・悪寒:約15〜20%

これらの副反応は、体の中で強い免疫が作られている証拠であり、ほとんどは2〜3日以内に治まります

認知症リスクの低減との関係について(因果関係は不明)

近年、帯状疱疹ワクチンの接種と認知症リスクの低下との関連を示す研究が複数報告されており、注目を集めています。

2024年7月、シングリックスの製造元であるGSK社は、アルツハイマー病協会国際会議(AAIC 2024)において、大規模な研究(ZOSTER-122試験)の結果を発表しました。この研究では、米国の1億1,500万人以上の電子カルテデータベースを用いて、シングリックスを接種した方、従来の帯状疱疹生ワクチン(ゾスタバックス)を接種した方、そして肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス23)を接種した方の間で、その後の認知症の発症率を比較しました。比較にあたっては、血圧や喫煙状況など394項目の背景因子を機械学習によって調整し、「健康意識の高い人ほどワクチンを打ちやすい」という偏りをできるだけ排除しています。

その結果、シングリックスを接種した方は、肺炎球菌ワクチンを接種した方に比べて、5年以内に認知症と診断されるリスクが20%低いことが示されました。また、従来の帯状疱疹生ワクチンとの比較でも、シングリックスを接種した方のほうが認知症リスクが23%低いという結果でした。

また、2024年7月にNature Medicine誌に発表された別の研究(Eyting M, et al. Nature Medicine. 2024;30:2777–2781.)、シングリックスを接種した65歳以上の方(約10万人)は、従来の生ワクチンを接種した方と比べて、6年以内に認知症と診断された割合が17%低かったと報告されています。

これらの研究から、シングリックスに含まれるアジュバント(AS01B)という免疫増強成分が、帯状疱疹ウイルスの再活性化による脳の炎症を防いだり、免疫系全体を活性化させて脳を保護したりする可能性が考えられています。

ただし、現時点ではこれらの研究が示しているのは「関連性」であり、「シングリックスを打てば認知症を防げる」という因果関係は証明されていません。GSK社自身も、シングリックスは認知症予防の目的では承認されていないことを明記しています。今後の研究の進展が待たれるところです。

GSK社のプレスリリースはこちら

免疫抑制剤投与中の方へ

当院では関節リウマチなどの自己免疫疾患の患者さんが多く通院されています。生物学的製剤・免疫抑制剤・ステロイドを使用中の方は帯状疱疹の発症リスクが高い一方、生ワクチンは接種できません。

シングリックスは不活化ワクチンであるため、免疫抑制状態の方にも接種が可能です。添付文書では、帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の方(免疫不全や免疫機能低下のある方など)にも接種できるとされており、この場合は1〜2ヵ月の間隔で2回接種します。

所沢市での定期接種について

詳細は所沢市のHPをご確認ください。

当院の紹介

ひろせクリニックは埼玉県所沢市にあり、西武新宿線の新所沢駅が最寄りです。当院では関節リウマチ・膠原病の診療を11名の専門医が担当しています。全身疾患であるリウマチ・膠原病の管理を万全に行うため、一般内科・小児科に加え、循環器、消化器、内分泌・代謝、呼吸器、泌尿器科など各分野の医師とも連携した診療を行っています。

免疫抑制剤や生物学的製剤を使用中の方の帯状疱疹ワクチン接種についても、治療内容を踏まえた適切なタイミングでの接種をご提案いたします。予防接種については、ほとんどの定期・任意の予防接種に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。


参考文献

  1. Lal H, et al. Efficacy of an Adjuvanted Herpes Zoster Subunit Vaccine in Older Adults. N Engl J Med. 2015;372(22):2087-2096.
  2. Cunningham AL, et al. Efficacy of the Herpes Zoster Subunit Vaccine in Adults 70 Years of Age or Older. N Engl J Med. 2016;375(11):1019-1032.
  3. Strezova A, et al. Long-term Protection Against Herpes Zoster by the Adjuvanted Recombinant Zoster Vaccine: Interim Efficacy, Immunogenicity, and Safety Results up to 10 Years After Initial Vaccination. Open Forum Infect Dis. 2022;9(10).
  4. Bastard J, et al. ZOSTER-002試験. シングリックス筋注用 添付文書.
  5. Eyting M, et al. The recombinant shingles vaccine is associated with lower risk of dementia. Nature Medicine. 2024.
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